研究コンソーシアムの当面の取り組み課題
本研究コンソーシアムでは、当面する重点課題として、以下のような研究を推進していく。
<グローバル人材育成と学習成果分析に関する研究>
国際教育プログラムにかかわる学習成果分析の手法と指標の国際比較をおこない。特にeポートフォリオを活用した「学生の学び」の可視化とデータ分析を中心に研究をすすめる。海外の事例や先行研究を比較検証したうえ、日本の大学に適合した分析指標と手法を確立していく。
- 欧州で進められている質保証の観点からの学習成果分析と北米で展開されている個別の教育プログラムの成果分析を調査し、学習成果分析にかかわる最新の動向を把握する。また、アジア・太平洋の大学で運用されている共同・複数学位課程の質保証制度について明らかにする。
- 既存の学習成果分析のツールとして、広く活用されている指標(外国語運用能力、異文化適応、学習姿勢等)と最近の研究で新たに開発された指標について、妥当性、有効性、限界などを検証する。たとえば、外国語運用力については、WTC:Willingness To Communicate、ACTFL(外国語教育学会)が開発したSimulated Oral Proficiency Interviewなどの評価ツールや各種の外国語標準テスト、異文化適応についてはBEVI(Beliefs, Events, and Values Inventory)、IDI(Intercultural Development Inventory)などの指標を比較検証したうえ、日本に適合するものを取捨選択する。
- eポートフォリオを活用して、長期にわたって多面的な学習成果の指標分析ができるようなシステムを開発し、実験運用することによりその有効性と課題を明らかにする。特に、留学経験のあるミッド・キャリア層に対する追跡調査を実施し、海外学習体験がキャリアに与えるインパクトについての経年調査を推進する。
<大学の国際化、国際戦略にかかわる組織評価の研究>
大学国際化にかかわる評価は、1999年にOECD/IMHE(高等教育機関管理プログラム)とACA(ヨーロッパ学術協力協会)が開発したIQR(Internationalisation Quality Review Process)、American Council on Education(ACE)がIQRを米国大学向けに再編したInternationalizing the Campus: A User’s Guideなどを先行事例として発展してきた。今日では欧州を中心にオーディット型評価、複数の大学の国際戦略を比較するベンチマーキング評価など、評価手法が多様化している。国際化評価に不可欠な指標は、EUの支援をうけてすすめられたIMPIなど多様な目的に対応した包括的な評価指標セットが開発されつつある。
日本の大学に適合した評価指標と手法を開発するため、国内における国際教育の実務者や研究者と連携した共同研究を推進していく。