12月1日(土)公開セミナー「外国学修歴・資格認証(Foreign Credential Evaluation; FCE)と人材流動化−人口減少・定住外国人・日本語教育−」 開催報告

2018年12月1日(土)に行われた公開セミナー「外国学修歴・資格認証(Foreign Credential Evaluation; FCE)と人材流動化−人口減少・定住外国人・日本語教育−」には、学生を含む60名程度の会場参加者に加え、ウェビナーでの20名程度の参加登録がありました。折しも、国会で外国人材の受け入れにかかる改正出入国管理法(入管法)が審議されるなど、外国人労働者の受入れに関して人々の関心が高まるなかでの、時機を得たセミナー開催となりました。

公益財団法人 アジア学生文化協会 理事長 白石 勝己様

開催にあたり、主催の科研メンバーの白石勝己氏よりご挨拶があり、同じく科研メンバーの新見が司会を務めました。
公益財団法人 日本国際交流センター 執行理事 毛受 敏浩様

毛受敏浩氏のご講演では、特に現在国会で審議中の「特定技能」の在留資格の創設に当たって、「移民政策がないと移民問題が起こる」という視点から、毛受氏の見解が語られました。これまで技能実習生や留学生として実質的に受け入れが進んできた外国人労働者に関して、「移民」という形での正面からの議論が始まったこと自体が大きな進展であり、今後、社会で広く議論が進められていくことが必要だという点が強調されました。
東洋大学 国際学部 芦沢 真五教授

芦沢真五氏によるご講演では、日本は2017年12月に「アジア太平洋地域における高等教育の資格の認証に関わるユネスコ地域協定(東京規約)」を批准したが、外国での学歴や資格を認証するFCEのシステムが十分には確立されておらず、そのための枠組みを早急に整えていく必要が出ている、と現状分析をおこないました。また、欧州、カナダ、オーストラリアなど海外での先進事例の紹介がなされました。今後は、日本版のNational Qualification Framework (NQF)と呼ばれる「資格のものさし」を確立していくことが課題であり、そのための議論を進めていく必要性が指摘されました。
エベレスト・インターナショナル・スクール・ジャパン 理事長 Bhupal Man Shrestha様

その後、ゲストによる問題提起として、シュレスタ氏からは、日本に定住する外国人労働者側の視点によるご発表がありました。日本に留学生として「デカセギ労働」を行なうネパール人が急増しているという実情と、日本社会において直面する語学の壁、日本文化やシステムの理解不足などによる様々な課題が報告されました。問題の解決に向けては、外国人労働者側による日本語や日本文化の理解とともに、日本人側も異文化を尊重して歩み寄り、両者がともに生活をしていく仲間としての意識を育むことが大切であると述べられました。
一般財団法人 海外産業人材育成協会(AOTS) 日本語教育センター担当長 杉山 充様

そして、ゲストの杉山充氏からは、高度外国人材として受け入れる人々に対する日本語教育機関の視点でのご報告がありました。日本語学習には、一般的には少なくとも6年程度かかるという状況において、優秀な外国人材を確保するにあたっては、海外における日本語教育人口を拡大するということによって母集団を増やすこと、日本側の日本語能力に対するハードルを下げること、また、日本人側が歩み寄ることの重要性が語られました。
パネルディスカッション

その後の質疑応答では、講演者・ゲストに対して多くの質問が寄せられ、活発な意見交換がなされました。セミナー終了後も、講演者・ゲストの前には個別の質問の列が続き、本セミナーの内容に対する関心の高さが伺えました。本セミナーを通じて、外国人材の受け入れに関し、多角的に課題を理解することができたとともに、現在置かれた個人の立場において何ができるのかを考えるきっかけとなったのではないかと思います。引き続き、本テーマに関して、様々な立場からの議論を続けていく重要性が認識されました。

報告者:新見有紀子(一橋大学 法学研究科)

当日の発表資料は下記よりダウンロードいただけます。
当日発表資料1「増大する在留外国人と政府の新政策」毛受敏浩 [PDFファイル/757KB]
当日発表資料2「人材流動化に資格認証はなぜ必要か」芦沢真五 [PDFファイル/1.71MB]
当日発表資料3「定住ネパール人コミュニティーの発展と直面する課題」Bhupal Man Shrestha [PDFファイル/477KB]
当日発表資料4「高度外国人材と日本語教育」杉山充 [PDFファイル/4.05MB]
 

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